なのはなテレビ

ここは、しづはのブログです。

花埋み

花埋み (集英社文庫)

花埋み (集英社文庫)

時代は維新がおこったばかりの明治の始めころから。埼玉県利根川べりの豪農の家に生まれた「荻野ぎん」は、17で嫁ぎ、夫から淋疾をうつされてしまいます。抗生物質もない時代、この病気は一生治ることのない業病でした。彼女は医者によって屈辱的な診察を受けます。その屈辱をばねに、同じような病を抱える女性たちのために、みずから医者になることを決意しました。ただ、時代は明治。そうやすやすと女性が医者になれるわけがありません。封建的な考え方が色濃く残るこの時代に、女性が医者になれる道は固く閉ざされていたのです。それらの難関をひとつひとつ乗り越えて、彼女は日本初の公的な資格を持った女性医師になれたのです。ここに至るまでのストーリーはほんとうにすごい戦いでした。戦後民主主義時代に生まれたわたしには想像もつかないのだけど、彼女が生きた時代はまだまだ男尊女卑が濃密に残っていました。女は家にいて、ひかえめに家を守っていればよいのだ、という時代です。女性が医者になるなんてとんでもない話だったのです。いまでいう医大に通うことさえ、とてつもなくハードルが高かった。それらの障害を着実にクリアして、彼女はやがて日本初の女性医者になりました。そして医者として活躍するかたわら、女性意識を高める運動にも身を投じていくのですが、40才すぎたころになって14才年下の男性と結婚したことをきっかけに、ちょっとあれれ?と思う道に足を踏み外してしまったようです。若い夫はクリスチャンで、クリスチャンだけの新天地を作ろうという意欲にあふれ、北海道に渡ってしまうのです。当時北海道はまだ未開の地。過酷な開墾生活。東京での医者をやめ、夫の後を追って北海道に渡った彼女は、慣れないクワやスキを手に開墾を手伝います。しかし、結局この開拓はうまくいかず、夫は病に倒れ、北海道で死んでしまいます。そのとき彼女は50後半で、医者としても古い知識しかもっておらず、もうどうにもならないところまで追い込まれてしまったのです。晩年、彼女は東京に戻りそこで最後を迎えるのですが、中盤とても活躍していただけに、なんだか晩年がさみしすぎると思いました。
この作品は、実話をもとにした渡辺淳一さんの長編です。映画で見てみたい。映画化はしていないのかしら。

ウィキペディア・荻野吟子
ぎんが生まれ育った俵瀬
瀬棚町公式サイト・荻野吟子
「命燃えて」公演に際しての埼玉県議会一般質問