死にゆく妻との旅路
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- 作者: 清水久典
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わたし、三浦友和さんのこと好きになったかも。
彼を意識して見たのはテレビドラマ版の「世界の中心で、愛をさけぶ」だったとおもう。綾瀬はるかさんの父親役でした。そのあとで見たのはNHKドラマの「ウォーカーズ 迷子の大人たち」でした。江口洋介さんの定年退職した元上司役でした。そのときもなんかいいなあっておもってました。
最近だと映画「アウトレイジ」です。ヤクザでしたけど、かっこいいじゃない、なんて。
そして、この「死にゆく妻との旅路」を見て、やっぱいいわーと改めてそうおもってます。
もちろん中年役です。仕事もない、家もない、奥さんは病気。ふたりでワゴン車で行くあてもなく旅をするのですが、うまくいえないのがもどかしいけど、いいんです、とても。もしかすると、これが三浦友和さんの本来のお姿に近いのかしら? なんておもったりして。髪はぼさぼさだし、ひげ面だし、あんまりかっこいい服は着ていないけど、奥さんを気遣う姿がすごくやさしそう。奥さんは年下なの。そして、彼女を病から救ってあげられない、そのやり場のない悲しみと怒りに悶々とするシーンを見て、わたしたちもなんとかしてあげて!と心の中で叫んでしまう。
エンドクレジットを見るまで奥さん役を演じた女優さんのおなまえがわからなくて、でもどこかでお見かけしたかただなーなんて考えながら見てましたが、石田ゆり子さんです。
そして、この映画は実際にあったお話を元にした作品です。
このDVDはわたしひとりだけで見ました。
夕食後、同居人に尋ねてみた。
「もしわたしが病気になったらどうする?」
きょとんとしながら、めんどくさそうに答える。
「病院に連れて行くさ」
「もし、治らない病気だったら?」
こういう質問はいけないってわかってます。でも、訊いてしまった。
彼はしばらく考えていました。
「ぜったいに治らないのか?」
「…そうよ。現代の医学ではどうすることもできないの」
「うん」
「薬もきかないの」
「そうか」
「そう」
さらに長い沈黙が。
「じゃあいっしょに旅でもするか」
びっくりしました。やっぱりそういう結論になるんだと。
健さんもそうでした。
三浦友和さんもそうでした。
この結論は男性にとっておそらくポピュラーなものなのでしょうか。
奥さんが病気になったら、ふたりで旅に出る。
「えー わたしべつに旅したくないけど」
ちょっち反論してみました。
「そうか」
「めんどくさいし」
「…」
「旅してどうするの?」
「どうって。いっしょにいろんなところに行けるじゃないか」
「いろんなとこって?」
「京都とか、温泉とか、北海道とか、いろいろだよ」
「ふーん」
「おまえにさ、いろんな景色を見せてやりたいんだよ」
「なにそれ」
「いや、だって死んじゃうだろ?」
「だれが?」
「おまえが」
「なんですってー!」
「ちょっ 待てっ」
ぼかぼかぼか。鉄拳制裁。
わたし「ワゴン車買え!」
同居人「は? ワゴン車? なんで?」
わたし「いいから買え! エルグランドにしろ! 健さんみたく」
同居人「なにいってんだよ」
怒鳴っていると、瑠璃が部屋から出てきました。宿題を済ませたようです。わたしたちを一瞥して、ひとこと
「ママうるさい」
「え? あたし?」
「だろー ママうるさいよなー」
と嵩にかかる同居人。大人げない。こどもに媚びるなー。
しかし瑠璃は公平です。
「パパもうるさい。ふたりとも黙らないとあれしちゃうよ」
瑠璃の秘密兵器発動宣言。
わたしたちはあわてて、瑠璃にひれ伏すのでした。
瑠璃の「あれ」はしゃれになりません。