なのはなテレビ

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第1回 事故はなぜ深刻化したのか

3月11日以後、福島第一原子力発電所でなにが起き、政府はどのような対応をしてきたのかを時系列でまとめて検証した番組の、第1回目を見ました。
NHKがこういう番組を作るということが、ある意味すごいことだとおもいました。国営放送と揶揄されることもままあるけれど、国営だったらむしろこういう事実はひた隠すはずなのに、やっぱりNHKは視聴者の視聴料で運営されているから、国民視線にたった報道をするのかしら。硬派な姿勢は応援したい。
あの日、福島第一原子力発電所で稼働していた原子炉がいっせいに緊急停止したあと、なにが起きたとおもいます? およそ1時間後に十数メートルの津波に襲われた第一原発は、建物内に侵入した海水によって非常用電源が使えなくなりました。発電所なのに、電気が使えないという笑えないパラドックス。核燃料は停止したあとも崩壊熱を発生するので冷却し続けないといけません。そのための冷却水を循環するポンプが停電で動かず、原子炉内の水はみるみるうちに蒸発していきます。そのとき政府がとった対応は、電源車を送ることでした。非常用電源が使えなくなったのだから、その代わりに電源車を送れば問題解決じゃない?とおもったわけです。全国から集められた電源車がいざ現場に到着したところ、コードが短くて届かなかったり、規格が合わずに電源コードがつながらないトラブルなどが発生。規格統一くらいしておくべきでしたが、後の祭り。なんとかコードをつないでみたけど、水を送るポンプは動きません。それもそのはず、津波で浸水していたのですから。わたしはこのとき、日本のトップにいる人たちはもしかすると小学生以下なのではないかとおもいました。ポンプってモーターで動くんでしょう? 水に浸かったモーターが動くわけありません。非常用のポンプは水中モーターにしておくべきでした。
そういうわけで、何時間もかけて電源車を送っても、ポンプを動かすこともできずに、炉心はどんどん加熱していったのです。
次に政府が取った作戦は、ベント。これは、原子炉内部にたまった高圧の気体を外部に放出することをいうそうです。つまりは、原子炉というのは圧力鍋とおなじ。ふだんは密閉された容器のなかで蒸気を発生させているわけ。加圧水型や沸騰水型という種類のちがいはあるにせよ、内部で発生した物質を大気に逃がさないということからいえば、どちらも圧力鍋です。ただ、圧力鍋には安全弁がついていて、内部の圧力が限度を超えたときにぶしゅーっと蒸気を放出しますね。原子炉の場合はそういうふうに自動的に作動する安全弁ではないみたいです。むやみに放出されたら放射性物質をまき散らすことになるから、ひとがスイッチを入れるのはわかります。ただ、ベントも電動だったのです。非常用電源も作動しない停電状態では、ベントしたくてもできませんでした。強行するには、ひとが高濃度の放射線をあびながら現場まで行き、手動で放出弁を開放するしかなかったのです。結果的にベントが実行されたということは、決死の覚悟で放出弁を開放しに向かったひとたちがいたはず! 戦争中の特攻隊みたいなものですが、あまりマスコミに出てきませんね。このひとたちも、結局は国によって抹殺。なかったことにされてしまいました。
しかも翌朝、ベントを指示していた菅総理はヘリコプターで第一原発の上空から視察。東電としては、上空に総理大臣がいるのに、放射性物質をまき散らすベントは実行できないわよねぇ。同行していた斑目春樹氏は「格納容器内には窒素を充填しているので水素爆発は起こらない」と進言したものの、数時間後に爆発。斑目氏の助言を真に受けた菅総理は、怒りまくり。このひと、理工系じゃなかったの?
斑目氏がこのNHKスペシャルに出演した勇気は買います。逃げずに出演して、当時を語ったことはおおきく評価できます。でもあのときあなたは委員長だった。発言がふつうのひとよりずっと重かったことだけは覚えておいてほしい。
番組の最後のほうで「3月11日以降のじぶんを消したい」というような意趣で、反省ともとれる発言をしていました。ちょっと泣き顔を作って。これもパフォーマンスの一貫だとしたら、彼は名役者だわ。