冬の花火

「花埋み」を読み終えたわたしが次に手に取ったのは渡辺淳一さんの「冬の花火」です。
戦後、帯広に生まれた中城ふみ子という歌人を扱った作品です。
乳ガンに冒され、わずか31年という短い年月を駆け抜けた彼女の一生をたどる物語です。
じつはまだ買ってきたばかりなので、序章しか読んでいませんが、はやくページを繰りたくて、わくわくしています。

冬の花火 (文春文庫)

冬の花火 (文春文庫)

昭和50年11月角川書店刊

冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか

帯広にある歌碑に、彼女の筆跡で書かれた歌だそうです。最近ようやく乳房を切らないようにする治療法が確立されてきましたが、これまでは乳ガンになるととにかく切除するばかりでした。命がだいじなのはわかるけど、乳房を茫くした女性が感じる哀しみにはどう対応してくれていたの? という疑問はずっと持っていました。文字どおり、胸に消えない傷を負った女性たちは、たとえガンで死なずに済んでも、そのあと精神的にものすごい傷を受けたまま、耐えて生きるしかないんです。こんなことなら死んだほうがましだったと思うほどです。
そういう気持ちがこの歌の「今少し生きて己れの無惨を見むか」に出ていると思います。生きてなお「無惨」なんです。
瀬棚に次いで、帯広にもぜひ行ってみたくなりました。

中城ふみ子さんの歌が、朗読で聴けます。
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